いど ボツバージョン

 

3000文字チャレンジ「井戸」のボツバージョンです。 

 

 

 

生まれも育ちも越後、今の新潟市下町(しもまち)の越次郎。

ひょんなことから江戸から嫁いだ、お千代。

お千代の弟、京太郎が江戸から遊びにきて、みんなでたらふく飲んだ次の朝…

 

「あー、頭が痛いわぁ。岩でたたかれてるようだよ…」

 

「おう、お千代、やっと起きたか。夕べは飲みすぎたな」

 

「京太郎が、わざわざ江戸から遊びにきてくれたからねぇ。

美味しいお酒を一緒に飲みたくなったんだよ。あぁ痛た。

おや、京太郎はどこ行ったのかい?

それに、うちの新之助もいないようだね?」

 

「昨日2人で、いどに行くって言ってたの、忘れたのか。

酒弱いのに、ぐびぐび飲んじまってたからなぁ。覚えてないのかい」

 

「井戸?なんでそんなとこに。面白いものなんか、ありゃしないよ。

…いたた。頭痛いから、もうちょっと寝かせてもらうわ…」

 

「おう」

 

 

(寝てはみたものの、20歳の京太郎と15歳の新之助が、井戸で遊ぶなんてなんだか変だねぇ。なんか悪いことでもしてるんじゃないだろうね…。

だんだん心配になってきたよ)

「ちょっとあたし、様子を見てくるわ!」

 

「へっ?お、おい。いどは遠いぞ?」

 

「なに言ってんだい。すーぐそこじゃないか。行ってくるよ!」

 

(あんなに近くの井戸が遠いなんて、うちの人、一気に老けたのかね。勘弁しておくれよ

 

ほら、もう着いた

あれ、誰もいないじゃないか)

 

「おーーーい、京太郎ー。新之助ー!」

 

「おーーーーい」

 

(誰もいないよ。

一応、井戸の中も覗いてみようか)

 

「おーーーーーい」

 

(返事ないよ。当たり前だわ。

 

おっとっと。

頭がクラクラするね

久々に飲みすぎたよ)

 

お千代が、これ以上覗くと落ちそう…

と思った瞬間に

 

ずるり

 

「あーーーーーーっ」

 

 

悲鳴をあげて、まっさかさま。

 

 

 

(ええっ!

あたし、井戸に落ちてしまったのかい?

こんな深い井戸、落ちたら終わりだよ。

ああ、でも、もうダメなのか。

短い人生だったよ。

 

京太郎は、5兄弟の一番末っ子。

一番上のあたしにとってもなついてくれて、可愛かったよ。

ケンカもあまりしなかったし。

嫁に行くとき、泣くのを我慢していたね。

久々に会えて楽しかったよ。

 

 

 

新之助、病気もせずに大きくなってくれて、良かったよ。

産まれたときは、小さくて小さくて、心配してた。

器用でなんでもできる、自慢の息子だよ。

 

料理なんか、あたしより上手いからね。

所帯を持ってさ、こじんまりとした、小料理屋をやるといいと思うんだよね。

ああ、それなら、どこかで料理の修行しなきゃいけないね。

修行先で出会った娘さんと一緒になったらどうだい?

ただし、板長の娘さんには、手を出したらいけないよ。

店を継がなきゃいけなくなるからね。

小料理屋ができなくなっちまう。

ほら、他にも誰かいるだろう?

店で働いていなくても、近くの店の娘さんとかさ。

誰か、京太郎のことを気に入ってくれる人がいるよ。

 

もし、あんたが好きになったけど、あっちが脈なしのときは、しつこくしちゃダメだ。

ストーカーはお縄になるよ。

諦めるのも肝心だ。

まぁ、あんたはあたしの子で器量いいから、モテるはずだ。

でもね、モテても調子にのるんじゃないよ。

二股なんてもってのほか。

あんたは悪いことしてると、すーぐ顔に出るから、バレる。

そういう所は、おとっつあん似だ。

だいたいなんでもできるけど、ちょっと抜けてるところがあるんだよね。

 

 

 

最後に越次郎さん。

不思議なご縁で一緒になって、新之助が産まれて…

のんびりしてるあんたと、ちゃきちゃきしてるあたし。

ちょっと要領わるいけど、憎めないのよ。

まぁ、そこがかわいいんだけど。

ケンカもたくさんしたし、今までいろいろあったけど、楽しかったよ。

 

嫁いできたばかりのときは、なに言ってるか全然分からなくてね。

言葉が江戸と越後じゃ違うんだ。

「おれのかかぁは、いどから来たんだっ!」

ってみんなに言ってた。

あたしはあんたのお母さんでないし、井戸から来たわけがないだろう。

江戸だよ、江戸。

どうやら、ここら辺の人は

「い」と「え」が逆になるようだね。

「いどからきた」ってのが

「えど(江戸)から来た」ということだったんだよね。

 

んっ?それじゃ、さっき越次郎さんが言ってた

「昨日、2人でいどに行くって言ってたの、忘れたのか」

てのは、

井戸じゃなくて、江戸か。

「いどは遠いぞ」とも言ってたし。

 

そういや、昨晩、新之助が京太郎に一緒に江戸に行きたいと、しつこく頼んでいたっけ。

ああ…なんだいなんだい。

飲みすぎて、頭が痛かったばっかりに

「い」と「え」を逆さに言うことを忘れていたよ。

 

なんて、アホなんだろうね、あたしは。

誰もいない井戸に探しにきて、すべって落ちて、あの世行きだなんて。

「江戸からきたお千代が、井戸に落ちてあの世に行ったってさ」

なんて、言われてしまうよ。

いや、

「いどからきたお千代が、えどに落ちてあの世に行ったってさ」

か。

これじゃ、わけが分からないね。

 

ああ、やだよ。こんな死に方は。

 

それにしても、なかなか落ちないね。

どんだけ深い井戸なのかね。

 

なまぬるい水の匂いがしてきたよ。

そろそろ、終わりか…

いやだよ、死ぬなんて、まだまだやりたいことが…)

 

 

 

 

 

 

ばちゃっ

 

 

 

(ん?)

 

 

ぴたぴた

 

 

「あちゃ、絞るのが緩かったか…顔がびしょびしょになっちまった。

まぁ、よく冷えて気持ちいいかもな。

こうやって、顔にのばせば…。うーん、シワのところに水が…」

 

びよーん

ぬりぬり

 

 

「痛っ!なにすんだよ、あんた!

顔、ひっぱらないでおくれよっ!」

 

「あ、ごめんごめん。起こしちまったなぁ」

 

「あれ?ここは…」

 

 「へ?なに言ってんだい?家だよ。」

 

「あたし、井戸に行ったはずじゃ」

 

「? 一度起きて、京太郎と新之助がいどに行ったって話を聞いて、頭痛いから寝るって言って、寝たぞ」

 

「井戸に行ってないのかい。

え、もしかして夢?

わわわーっ!

生きてる!

あたし、生きてるよーーー!

 

あれ?なんで、あんたあたしの顔に水ぬってたんだい?」

 

「ああ。寝ながらうーんうーん唸ってたから、熱でも出たかと思ってな。

手ぬぐい濡らしておでこにのせようとしたら、絞りがゆるくてビチャビチャたれて、水がもったいねぇから顔にのばしてたんだよ。

おかげでしっとりしてるだろ。アハハ」

 

「…なんだい、そりゃ」

 

「起きたら元気だな。良かった良かった」

 

「ああ、もうあんたって人は…」

 

 

 

 

 

ちょうどお時間でございます。

どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

ひえーーー!

相撲みたいに、座布団投げるのは勘弁してー!

寄席ではそんなことしないから!

これボツバージョンだから!

 

オチ(サゲ)がない、とか

江戸時代のことよく分かってない、とか

井戸と江戸、方言わかりずらいわ、とか

方言、全然話してないじゃん、とか

新之助って新潟県が開発した新品種のお米じゃん、とか

まぁ、いろいろつっこみどころがあると思いますが、勘弁してください。

 

なぜこっちがボツになったのか、というと

会話が続いて、誰が話しているかわかりづらい、と。

こりゃダメだと、書き直したのが、ボツにしてないバージョンです。

 

落語っぽくしようとしたら、うまくいかないなぁ。

落語は、しぐさとか声色で人物分かりやすいんですよね。

文字だけって難しいわぁ。

 

あらら、しかもまだ3000文字にいってないっていうね。

 

次のお題は「私を熱くさせた○○」

その次は「さくら」

もうそろそろ、桜の時期か。

あー、入園準備進んでないわ。まずい。

 

3000文字越えたのでおわりにします。

長々とありがとうございました。

あ、こっちはボツバージョンだから、3000文字気にしなくてよかったんだな。

まぁ、いっか。