ヨーグルト事件 【3000文字チャレンジ 野菜】

 

「おい、コナン。

ハカセのヨーグルトが盗まれたって!」

 

給食後の昼休み。

トイレに行ったら、グルメが楽しそうに話しかけてきた。

 

俺は、湖南 真。小学5年生。

名字が「こなん」なので、「コナン」と呼ばれている。

名探偵では、ない。

でも、「名探偵」って呼ぶヤツもいる。やめてほしい。

メガネもかけていないし、年中短パンでもない。

 

俺に話しかけてきたのは、グルメ。

海原 司郎。

ばぁちゃんが、有名料理研究家。

父ちゃんも、料理研究家。

こいつの家に遊びにいくと「撮影用に作った」と、うまいものがたくさん食べれる。

運動会のときの弁当も、ちょー豪華。

食べ物のことに詳しい。

だから、あだなが「グルメ」

グルメは将来、料理研究家ではなく、ぶらぶら散歩しながら食べ歩く番組に出るタレントになりたいらしい。

 

「おい、コナン。

これは、事件だぜ」

 

「え、そうか?」

 

「そうだろ?

ハカセのヨーグルトが盗まれたって、大事件だろ!」

 

「うーん…」

 

「事件!事件!

俺たちで解決しようぜ!」

 

グルメは、いまいち乗り気じゃない俺の腕を引っ張って、ズンズン歩いていく。

 

はー、俺、コナンだけど、名探偵コナンじゃないんだけど。

むしろ、「名探偵名探偵」って言われすぎて、イヤだからコナン見てないんだけど。

 

まー、仕方ないか。

グルメは、俺のこと「名探偵」って呼ばない友達だからな。

付き合ってやろう。

 

 

「おい、ハカセ!ヨーグルト事件、俺たちが解決してやるぞ!」

 

「…え?」

 

給食が終わって、ほとんどの生徒がいない教室の中で

ハカセは、窓際の席に座り頬杖をついてうとうとしていた。

 

「ほら、ヨーグルト盗まれたって言ってたじゃん。俺たちが犯人を捕まえてやる!」

 

「あ、ああ、それね。

盗まれたっていうか、無くなったって言ったじゃん。

もう見つかったから、いいよ」

 

「ええーーー!せっかく、コナンと推理して犯人逮捕してやろうとしたのにー!」

 

「いいじゃん、解決したならさ。

グルメ、俺と鉄棒の勝負しようぜ。

ハカセ、ヨーグルト見つかって良かったな。」

 

「いや、俺、推理したい!」

 

なに言ってんだ、こいつ。

解決したって言ったのに。

 

「ハカセー、俺、推理したいんだよぉー。ヒントくれよぉー」

 

は?

なんだそれ。

推理したいから、ヒントくれって、おかしくね?

 

「グルメって面白いね。

いいよ、ヒントあげる」

 

は?

ハカセまで!

解決したなら、もういいんじゃね?

 

「ヒントはね

名前にやさい、だよ。

んじゃ、僕、寝るから。

昼休み終わるまでに考えてね」

 

そう言うと、ハカセは机に突っ伏して、スヤスヤと眠りだした。

 

ハカセは、葉加瀬 一郎。

両親が大学の先生。

頭がいい。

難しいこともたくさん知っている。

最近、塾が忙しいみたいで疲れているみたい。

中学受験して、有名進学校に行くらしい。

昼休みに、よく寝ている。

 

 

「名前にやさいか…ううーん、誰だろ?

コナン、分かった?」

 

「分かんねー。つーか、聞くの早すぎ!」

 

「ごめんごめん。

名前にやさい、野菜…」

 

「ええと、いつ無くなったんだっけ?」

 

「は?給食のときに決まってんじゃん!」

 

「それは分かってるよ。給食の時間のいつ頃だよ」

 

「ハカセがカレーのおかわりを盛って、席に戻ったらヨーグルトが無くなっていた、って言ってた。

カレー食ったら、ヨーグルトだよなー。ホントはラッシーが飲みたいんだけどさー、給食じゃ出ないんだよねー」

 

「ラッシー?なにそれ?マリオのヨッシーの仲間?」

 

「えー!コナン、ラッシー知らねーの?うめーよ。

今度うち来いよ。ばーちゃんに作ってもらお」

 

「マジで?やった。グルメんちって本当にグルメだよなー。

あ、ヨーグルト事件。

えっと、紙に書こうか」

 

自分の席に戻り、机に手を突っ込み、ごそごそ…

あった、昨日配られた裏になにも書いていない、プリント。

 

「ここに書いていこう」

 

「お、いいじゃん。コナンすげーな。

あれ、でもこれ親に渡すプリントじゃね?」

 

「ま、いっか。後で消せばいいや」

 

鉛筆で、ハカセの席を四角く書く。

 

「ええと、ハカセがおかわり盛ってる間に盗める人は、近くの人だと思うんだ」

 

ハカセの席は、窓側だ。

近くの席は

斜め前

斜め後ろ

後ろ

の5つ。

 

鉛筆で四角を5個書き、名前を書いていくことにした。

 

かぶらぎ ゆあ

おおね みなと

やおさか いちご

さとう ふきのすけ

なすかわ あん

 

この5人だ。

 

「この中だったら、ミナトじゃね?あいつ、体でかいし」

 

「まあね。

でもさ、『やさい』ってヒントだったじゃん。

ミナト、野菜より肉って感じじゃね?」

 

「ああー、そうかも」

 

「なんだろー、野菜、野菜…」

 

席と名前を書いた紙をじーーーっとグルメと見つめていた。

 

 

「あっ、分かった!」

 

「おー、ビックリしたー。グルメ、なにが分かった?」

 

「犯人分かった!」

 

「マジで?早っ!」

 

「名前に野菜があるんだよ、ほら!」

 

 

「かぶ」らぎ ゆあ

おおね みなと

やおさか 「いちご」

さとう 「ふき」のすけ

「なす」かわ あん

 

「おおーーー!すっげーーー!

あれ?『いちご』って野菜?」

 

「おう、いちごは果物じゃなくて、野菜なんだよ。ばーちゃん言ってた」

 

「マジで?

俺、野菜キライだけど、いちごは好きなんだよなー」

 

「えっ、コナン、やおさかいちごのこと好きなの?」

 

「ち、ちげーよ。食べ物のいちごだよ!ややこしーな。

でもさ、犯人4人になっちゃうじゃん。

ふきって何?野菜?」

 

「コナン、蕗、知らねーの?マジで?

煮物マジでうまいよ。

あ、これっくらいの、おべんとばこにって歌あるじゃん」

 

「それは知ってる。

おにぎりおにぎり、ちょっとつめて

だよな」

 

「そうそう、それの最後の

すじのとおった、ふーーーき

の、ふーーーき

って蕗っていう野菜なんだよ、山菜だっけ?ま、いっか」

 

「へー、さっすがグルメだなー。

んで、4人犯人?」

 

「うーん、でもさ、あのちっちゃいヨーグルトを4人で分けるってなー、ないよなー。じゃあ、名前に野菜がない、ミナトかなぁ」

 

「あー、やっぱミナト?

あっ!待て、グルメ!

ミナトは大根だった!」

 

「は?」

 

「ミナトの名字『おおね』は漢字で書くと『大根』、だいこんだ!」

 

「あ、そうだった!忘れてた!

なんだよー、じゃあ誰だよ、犯人は」

 

また2人で、紙とにらめっこ。

 

いつのまにか、教室がにぎやかになってきた。

もうすぐ、昼休みが終わる。

マズイ。

俺たちの推理のタイムリミットが近づいている。

ドキドキドキ。

爆弾が爆発するわけでもないのに、ドキドキしてきた。

きっと、グルメもドキドキしているはずだ。

 

 

「分かった?」

 

ビクっ!

俺とグルメは、ちっちゃく跳ねた。

 

「なんだよー、ハカセ。ビビったー」

 

「ははっ、ははははは…ツボった…はは…」

 

「んだよ、笑いすぎじゃね?

わっかんねーよ。

名前に野菜がある人かと思ったら、みんなあるんだよ」

 

「あ、ホントだ。

すっげー偶然。

よく気付いたね。

でも、もっと簡単だよ。

鉛筆貸して」

 

 

 

やおさか いちご

 

「や」お「さ」か 「い」ちご

 

「ほら、『やさい』でしょ」

 

「まーーーじーーかーーー!」

 

「やおさかさんが食べてくれたんだ」

 

「ん?、盗まれたんだろ?」

 

「だから盗まれたんじゃなくて、無くなってたんだってば。

僕がヨーグルトが苦手なのを知ってて食べてくれたんだ」

 

「え?」

 

「おかわりして席に戻ったら、ヨーグルトが無くなっててさ、机やカバンを探しても出てこなくて。

腐ったヨーグルトがでてきたらイヤだから、あちこち探していたんだ。

そしたら、やおさかさんが『私が食べたの』って」

 

「は?

ミナトとかが見てたんじゃねーの?」

 

「それがさ、他の皆は僕と一緒にカレーのおかわりに行っていたんだ」

 

「なんだ、それ。まぁ、カレーだからな。

うまいからな。

俺もおかわりしたからな。

仕方ないか。

やっぱ、ラッシー欲しいよなー」

 

「で、なんで、ハカセがヨーグルト苦手なのを知ってたの?」

 

「この前、初めて席が近くなって、お互い自己紹介したときに話していたらしい。

僕、言ったことも忘れてたんだけど」

 

「へー。やおさかさん、記憶力すげーなー」

 

 

 

…グルメとハカセは笑っていたけど、俺は知ってる。

彼女は「記憶力がスゴイ」のでは、ない。

彼女は、ハカセのことが…

 

だって、俺は、ずっと…

 

 

 

 

 

※この話は、フィクションです。

※太字に文字装飾していたところは、文字を通常に変更し、「」(かぎかっこ)で囲みました。

 

最後まで、読んでいただきありがとうございました!